福岡家庭裁判所行橋支部 昭和48年(家)33号 審判 1973年4月09日
申立人 寺山キクノ(仮名)
被相続人 亡寺山智恵子(仮名)
主文
被相続人亡寺山智恵子の相続財産である別紙目録(2)記載の物件を申立人寺山キクノに分与する。
理由
(本件申立の要旨)
申立人はさきに被相続人寺山智恵子の相続財産分与審判を申し立て、昭和四七年九月一九日別紙目録(1)記載の物件を分与する旨の審判をうけた(福岡家庭裁判所行橋支部昭和四七年(家)第一一七号)。
ところがその後になつて別紙目録(2)記載の物件も被相続人の相続財産であることが判明した。
そこで申立人は前件で申し立てたとおり被相続人の継母として同人を養育監護してきた特別縁故者であるから、別紙目録(2)記載の物件をも申立人に分与する旨の審判を求める。
(当裁判所の判断)
1 本件では先ず民法第九五八条の三第二項の期間内の請求だとみることができるかどうかが問題になる。
即ち民法第九五八条の三第二項によれば分与請求は相続権主張の催告期間満了後三箇月以内にしなければならないとされているが、申立人が別紙目録(2)記載の物件につき分与の申立をしたのは昭和四八年二月二六日で、これは形式上は上記分与請求の法定期間経過後になる。
しかし申立人はさきに前件(上記昭和四七年家第一一七号)の申立をするにあたつては法定期間内に申立をしており、その際分与の対象物件として別紙目録(1)記載の物件をとりあげてはいるが、これは別段右物件だけに限定して分与の申立をした訳ではなく、偶々その当時申立人は被相続人の相続財産としては右物件で全部だと思い込んでいたため、右物件だけをとりあげたまでであつて、その趣旨は要するに被相続人の相続財産全部を分与してもらいたいということであつたものとみられる。
ところがその後(法定の期間経過後)になつて別紙目録(2)記載の物件も被相続人の相続財産に属することが判明したので、前件申立の対象物件にこれを追加する趣旨で本件申立をしたものとみられる。
このようにみれば本件申立は前件申立と一体をなすものと認めるのが相当であるから、結局法定の期間内になされたものということができる。
2 次に申立人と被相続人との関係については、前件における判断のとおり、申立人は被相続人が四、五歳の頃から同人が一七歳で病死するまでの間いわゆる継母として同人の養育監護にあたり、また病気療養中に看病に努めたことは勿論、死亡の際には葬儀を主宰しその後の年忌の法事をも営んでいる関係にあるので、申立人が被相続人の特別縁故者にあたること明らかである。
なお別紙目録(2)記載の物件はもと寺山小夜子(被相続人の実母)の所有であつたが、昭和一一年一月一九日小夜子死亡により被相続人が遺産相続したものであり、別紙目録(1)記載の物件と同様、申立人において耕作管理しているものである。
ただ、前件申立の際はまだ小夜子所有名義のままになつていたので、申立人にも相続財産管理人にも果してそれが被相続人の相続財産に属するものかどうか判断がつかず、分与の対象物件にとりあげることができなかつたものである。
3 以上のとおりであるから、当裁判所は別紙目録(2)記載の物件をも申立人に分与するのが相当であると認め、主文のとおり審判する。
(家事審判官 永松昭次郎)